五.記憶の真実
うみが目に映したものは、海に浮かぶ船だったり、カモメだったり、一般的なものだった。
そんな一般的な漁船の船から、漁の網が海面へと投げられ、そしてその時の乗員のハンカチか何かがはずみで海に落ちて浮かぶ。
そのハンカチも、次第に水を吸収して、水底へゆっくり沈没していった。
その一部で、うみは何か恐怖の根源のようなものをフラッシュバックしたようだ。
いきなり震えだし、泣き出すうみに、ソールは困惑する。
うみは、ともみを知っていた。
彼女は、ともみとは、ソールと会う以前に出会っている。
そう、それは懐かしくて恐怖の記憶の断片にある。
うみが、初めて意識を持った頃。
うみは、目を覚ますと白衣を着た優しげな男と出会う。
その男は、自分が目覚めたことに嬉しそうに笑って、うみのことを色々と意味不明な説明で教えてくれた。
君はクローン。
「君がここにいるのは、そこに寝ている女が使えない時に、君を殺す為だよ?」
という物騒な言葉。
それを、男は満面の笑みで言った。
寝ている女というのは、褐色の肌をした女の子で、ぐっすり寝ているのか死んでいるのかよく分からない。
もちろん、自分の状況も男の言葉も理解できなかった。
すこし時間が経過した頃、寝ていた褐色の肌した女の子が起きて、いきなり男を威嚇した。
男の名前は 深海 (シンカイ)というらしい。
そして、褐色の女の子の事を、ともみと男は呼んだ。
二人のやり取りで、うみはともみと姿形がそっくりであること、その理由は自分がともみのクローンだからということを理解する。
深海はともみに、ある日がきたら、殺すと宣言する。
その代わり、そこのクローンは助けてあげると男はつづけた。
場所は船、部屋の中に男が一人。
でも、ともみは勝つことを諦めていた様子がしながらも、部屋を飛び出した。
でも、それから一時して、他の男に連れられて、ともみはまた部屋へ連れ戻された。
動けなくなったともみの体のあちこちに、それまでにはなかった傷やあざができている。
きっと、もうともみは逃げないだろう…・…。
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