三. うみの反抗
うみは、そのソールの言動に、激しく傷つけられてしまった。
小春の部屋に逃げ込み、ともみと同じく、再び小春の言葉に助けられることはなく、家から出て行ってしまう。
森の中に逃げ込み、山をかけ、洞窟の中で涙と悲しみで満ちた心で壊れそうになる。
うみを助けてくれたのは、優しい言葉でも、暖かな人のぬくもりではなく、怒りだった。
どうして自分は、ともみにこんなにも振り回されなければいけないのか…・…。
誰にも、「うみ」として見てもらえず、結局はともみの「代わり」。
たった一人の大切な人さえ、ともみはうみに分けてはくれなかった。
この苦しみを、ともみに返そう。
「代わり」がいらなくならないように、ともみが現れるようなら今度はわたしの手で…・…。
春やソールの捜索で、ようやく洞窟まで二人がやってくる。
その頃には、うみはすっかり生まれ変わっていた。
その態度は冷ややかで、誰も信用していない目で歴然。
二人は何事なのかと驚いた。
家に帰って、うみは大人しくなった。
それでも、たまに見せるその顔には、黒いものが見え隠れしていて、鈴もショックを隠せない。
次の日、いきなり丸江が訪れる。
そして、ソールが止めに入るものの、丸江にうみをつれていかれてしまう。
しかし、戻ってきた丸江に話をきくことになる。
うみは、資産家の家独特で行われているクローンだった。
その管理をしているのが、丸江。
クローンは、資産家の当人が病気や事故で体の一部、臓器等を破損してしまった場合、それを補うバンクとして使われていた。
そのバンクは、個人情報保護も含めて、当人が死亡してしまった場合は、バンクも消すことになっていたのだ。
それがどうしてか、ともみのバンクは綺麗さっぱりどこかへ持ち去れてしまっていたという。
探していたところ、ノイルへ傘を届けにいっていたうみを発見し、回収に伺ったのだという。
ソールは怒りと、希望を失った悲しみで不安になる。
しかし、うみを失うわけにはいかず、バンクの死に繋がるともみの不可解な死についてを否定した。
検査はしたがともみのDNA、ニルにも発見できていない時点でもう希望もない。
それでも否定した。
その結果、丸江はうみの監視をソールに任せて退散し、再び二人部屋の生活が戻ってきたのだった。
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